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EP14「漆黒の姫」

 -12/28 PM02:11 ARS本部 機神・疑似機神ハンガー-

 戦闘後、俺たちは回収された。その後のフィードバックの苦しみもだんだん弱まってきたので、俺はハンガーへと向った。
まだディスペリオンからレドナは出てこないらしい。

暁「レドナ・・・。」

 ぼろぼろのディスペリオン、そのコクピットはこじ開けられた形跡があった。レイナさんを助けるためで、すでに今は緊急手術室で手術を受けている。
医療スタッフの話によるとコクピットをこじあけた時のレドナの呆然とした表情は恐怖と絶望そのものだったらしい。
下からでも若干見えるレドナは、黒の私服は血の赤で真紅に染まり、開いたままの目が不気味だった。

-

レドナ「レイナ・・・。」

 どこにいるんだレイナ。さっきまで俺の腕の中で微笑んでいたレイナ。俺が好きなレイナ。
もうここにはいない。それは分かってる。ただそう思うと体が引き裂かれるほど痛かった。
 何をすればいいのか分からない。分かりたくない。考えることをしたくない。

レドナ「レイナ・・・助けて・・・。」
 

 EP14「漆黒の姫」


 -PM02:45 ARS本部 司令室-

 いつものメンバーはレドナの今後の処分についての話があると言われ、司令室に集められた。
俺が入ったときには、すでに全員揃っていた。

剛士郎「来たか。それでは、話を始めるとしよう。」

 吉良がゆっくりと机の上で手を組んだ。

剛士郎「伝えていた通り、夜城君の今後の処分についてだが・・・。
    彼の精神状況によっては彼の抹消を視野に入れている。」
暁「何でだよ!!アイツはリネクサスに脅されてただけなんだ!」

 だいたいその理由は推測できた。だが納得はできない。

雪乃「私たちもこんなことはしたくないけど・・・。
   精神が不安定になって夜城君が勝手に機神を動かしたら大事になるわ。」
輝咲「夜城さんは、今どうしているんですか?」
雪乃「ついさっき独房に入れて24時間監視体制でいるわ。」
剛士郎「我々も鬼ではない、なるべく説得して事がいい方向に行くよう考えている所だ。」

 レドナを何とか説得させる方法、俺には一つ思い当たる節があった。

暁「・・・そうだ。レイナさんからレドナに渡すものがあったんだ。」
剛士郎「ほぉ、それは何なんだい?」
暁「分からないけど・・・、一旦夜城の家に行ってみる。」
剛士郎「分かった。頼んだよ鳳覇君。
    それと、榊君、寺本君、鈴山君も一緒に行ってくれないか?
    重い荷物だと困るからね。」

 苦笑して剛士郎が言った。

佑作「了解っす。でも神崎さんと桜さんはどうするんですか?」
雪乃「悪いけど、お留守番よ。
   今のところアルファードを除いてスティルネスとアーフクラルングが一番機動可動状態にあるから。」

 有坂の操作する端末の画像には何やら機神の情報が映し出されていた。

かりん「ま、私は別にいいけどね。」

 背伸びして桜が言う。どうやら疲れているので休んでおきたいようだ。

暁「そうと決まれば、はやく行こう。
  レドナが何かしだす前に。」

 俺はすぐに司令室を出た。それに輝咲と寺本と鈴山が続いた。


 -PM03:18 福岡県某所 夜城家周辺-

 俺は慣れた足取りで夜城家へと進んでいった。夜城家へと言っても、自宅でもある。
人の家に行くという感覚は薄かった。
 角を曲がると、ようやく目的のマンションが見えてきた。

佑作「あのマンションが鳳覇ん家か?」
暁「おう、俺が10階で夜城が9階だ。」

 右手で大体の位置を指した。
 それからすぐにマンションに到着した。エレベーターにのり9Fを押す。いつも10Fしか押さないので押し間違えそうになった。
ドアが開き、夜城家のドアを開ける。鍵はかかっていなかった。まぁ当然といえば当然の話だ。
 靴を脱いで部屋に上がると、ついさっきまで生活感があったような感じがしていた。とりあえずレドナへの渡し物を探すべく手分けした。

輝咲「夜城さん、お姉さんと仲良かったんですね・・・。」

 輝咲が棚の上に置かれていたレドナがレイナと笑顔で映っている写真を見て呟いた。

結衣「本当、すごく幸せな顔してるね。」

 急にリネクサスに対して怒りがこみ上げてきた。あの百足野朗とヘカントケイルのドライヴァーを潰す。
俺はそう決心した。それはリネクサスを潰す通過点であるが、中間地点として捉えられるだろう。
 俺はその会話に耳を傾けるのをやめ、レイナさんの部屋へと入った。いかにも女の子らしい部屋だった。
違和感があるとすれば、ベットの周りにある装置やコード類が目立つ。きっと自動でベットを起こしたりできるのだろう。
そのベットを跨っている机の上に大きなスケッチブックがあった。

暁「これか?」

 スケッチブックを手に取り、パラパラと開いてみる。窓から見える夜景や、部屋にある置物が丁寧に描かれていた。
あまりの上手さに時間を忘れて見ていると、残すところ最後の1枚となった。そのページには一通の手紙が挟まっている。
ページに挟まっている手紙を抜き出してみると、可愛らしい文字で"レドナ君へ"と宛名が書かれてある。
さすがに人の手紙を読むのは悪いと思い、挟み戻すため最後の1ページを開いた。

暁「!」

 そこにはこれがレイナさんが渡して欲しいと言った物であることを裏付ける絵が描かれていた。
長々とこの絵を見るのは悪い、すぐにスケッチブックを閉じて皆の所へと戻った。

暁「皆、あったぜ。」

 俺はスケッチブックを掲げた。皆は作業を中断してこっちを見た。

佑作「何でそれなんだよ?」
暁「これを渡してくれって手紙があった。」

 さすがに中身を見せるのはマズイと思い、適当に誤魔化した。

結衣「スケッチブックって事は、何が描かれてあるのかな?」
暁「分からないけど、とりあえず人のを無闇に見るのはやめておこう。
  早くレドナに渡しに戻ろう。」

 俺たちは夜城家を後にした。家を出るときに、さすがに開けっ放しでは危ないので、鍵を捜して掛けた。


 -PM04:05 ARS本部-


 本部に着いて、俺たちはすぐにレドナがいる独房へと向った。だが、神はそれを拒んだらしい。
突然の警報、緊急事態発生を知らせるサイレンが鳴った。

暁「どうしたんだ?」

 -緊急事態発令、リネクサス部隊が接近中。総員ただちに戦闘配置に着いてください。
  ドライヴァーは地下ハンガーに集合してください。-

輝咲「リネクサスが!?」
佑作「くそっ、こんな時に!」
暁「輝咲はこいつを持ってレドナの所に行ってくれ。
  俺たちも急ごう!」

 こんな時にリネクサスの部隊が来るということは、考えられる理由はただ一つ。
レドナを殺し、ディスペリオンを回収すること。先の戦闘で分かったとおり、ディスペリオンはノヴァに対抗する力を持っている。
それを取り返しに来るということは、向こうも相当な戦力で来るはずだ。
 俺はスケッチブックを輝咲に渡すと、ハンガーへと向った。


 -PM04:07 ARS機神・疑似機神地下ハンガー-

 俺たちがハンガーに着いた時には、すでにスティルネスとアーフクラルングの影は無かった。

淳「やっと来たか、鈴山君と寺本君は自機で待機しておいてくれ。
  まだ完全に機動可能状態ってわけじゃないから、治り次第出撃してもらうよ。
  鳳覇君はいつもどおり、ガンガン行ってくれ!」
暁「了解!」

 俺はアルファードの横の階段を駆け上がり、コクピットに乗った。明滅するモニターを見て、機動状態を確認する。

暁「行くぜっ、アルファード!!」

 白龍は、勢い良くハンガーを飛び出した。地上の光が見え、アルファードは夕焼け空に聳え立った。5km先の大きな工場地帯の方から煙が上がっていた。
駆け寄ると、もう量産されているエインシードの相手をしているスティルネスとアーフクラルングが見えた。

静流「鳳覇、気をつけろ。さっきの百足型も来ている。」
暁「アイツが!?」

 周囲を見渡しながら構える。レーダーも見てみたが、奴の機影は無い。

かりん「馬鹿っ!アイツは地中にいるっての!」
暁「えっ?」

 ふと真下を見ると、地面がもごもご動いていた。地表が引き裂かれたと思うと、大百足が顔を出した。
初見の時とは違い、完全に百足の形をしていた。どうやらあの胴体は変形して本当の百足状態になるようだ。

ディック「サンクチュアリ、俺とこのタウゼンファビュラー楽しませてくれよ!ひゃーっはっは!!」

 タウゼンファビュラーと呼ばれた大百足は再び地中に潜った。

暁「お前らの目的は何なんだ!」
ディック「そんなの知ってるくせに、いちいち説明すんの面倒なんだよな。」

 やはり、レドナとディスペリオン目的だ。

暁「ったく!勝負するなら表に出て来い!!」

 突如後方に反応があった。タウゼンファビュラーの尻尾と思われる刺々しい物体がアルファードの背中を叩いた。

暁「ぐっ!!」
ディック「おいおい、地面に出てきてやったってのに、そりゃ無いぜ!」

 次に地面から出てきた百足の頭がアルファード右足に喰らいついた。アルファードの右足がメキメキと音を立てていた。

暁「このままじゃ・・・!」

 このタウゼンファビュラー相手に足を失うことは敗北を意味するだろう、地上に立てなくなった時点で奴は胴体に喰らいついてくる。
それなら何としてでもこの状況を打破しなければならない。俺に方法は一つしかなかった。

暁「頼むぜ、ブラッディモード!!」

 血の涙がアルファードを一瞬にして真紅に染め上げた。

暁「サンクチュアリ・クラスターッ!!」

 肩と膝の装甲が開き、ノヴァの粒子が全身を覆う。

ディック「しまった!!」

 大百足が足を離したときには、すでに百足の口元のハサミは消滅していた。こちらの力に恐れてか、タウゼンファビュラーはすぐに地面に潜った。
ノヴァを放つのを止め、俺はどこから来てもいいように構えた。すでに奴のハサミ攻撃は完全に失われた。
ならば次に出てきたところを抑えて、クラスターを放てばこちらの勝ちだ。
 左後の地面に罅が入る。

暁「そこかっ!」

 首を捕まえようと振り返る。だが次の瞬間には左腕が食いちぎられていた。

暁「何!?」
ディック「あぁ、言い忘れてたけど、こいつは機神だからな。
     それに全回復能力をこのスティングバイトを最優先にするようにしてあるんだぜ。」

 食いちぎられた左腕が地面にドスンと落ちた。途端にブラッディモードが解除された。


 -同刻 ARS本部 収容所-

輝咲「夜城さん。」

 何日ぶりだろうか、久々に人の声を聞いた気がする。いや、実際のところ何時間かしか経っていないだろう。

レドナ「・・・。」

 明かりしかない部屋のドアに、榊が立っていた。

輝咲「これ、お姉さんからの物です。」
レドナ「レイナの・・・?」

 俺は榊が両手で抱えていたスケッチブックを受け取った。このスケッチブックは、あの時自分の夢を描いていた物だ。
それを探すべく、俺は急いでページを捲っていった。すると、最後のページにそれは手紙と共にあった。
小さく"My Dream"と書いてあるその絵には、ウェディングドレスを着たレイナが、俺にお姫様抱っこをされている絵だった。
胸が熱くなった、自分でも体が震えているのが分かる。
 次に俺は挟まれてあった手紙を開けた。見覚えあるレイナの字で、こう書かれてあった。

-レドナ君へ-
 この手紙をレドナ君が読んでいる頃には、私はもうレドナ君に会えないかもしれない。
 今までずっと黙っていたけど、私はレドナ君が危ない事に関わっているのを知ってたよ。
 私を助けるために、頑張ってくれていたことも、全部知ってる。
 でも、口で言っちゃうとレドナ君に嫌われるかもしれないから、ずっと言えなかったんだ。

 私は頑張ってくれるレドナ君大好きだよ。
 私も何か恩返しがしたかったけど、こんな体だから何も出来なくて。
 前に私が一緒に居てくれるだけで嬉しいって言ってくれたよね?
 嬉しくて、私ずっとレドナ君の傍に居てあげようって思ったんだ。
 だからレドナ君が遠くならないように、私はずっと知ってること黙ってたんだ。
 ほんとにごめんね。

 レドナ君は私のために戦ってきてくれたから、私が居なくなったら何も出来なくなるかもしれない。
 私のばかな夢を叶えることも出来なくなっちゃう。
 私だって、悲しむレドナ君なんか見たくないよ。
 だから、今からは私のお願いを叶えて。
 ずっと平和な世界にしてほしい、ずっと誰もが愛し愛される世界にしてほしい。
 ずっとこの世界を守っていてほしい。
 普通なお願いだけど、今の私にはそれぐらいしか考え付かないよ。

 手紙なのに、長くなっちゃってごめんね。
 困ったときも、辛いときも、いっつも私はレドナ君の心の中にいるからね。
 レドナ君も、私の事をずっと忘れないでね。
  -世界でレドナ君を一番愛してるレイナより-

 手紙を読み終えて、俺は情けないほどの涙が溢れていることに気付いた。

輝咲「きっとお姉さんは、落ち込んでいる夜城さんの姿を見たくはないと思います。」

 俺は黙って立ち上がり、手紙を半分に折ってポケットに入れた。

レドナ「俺は・・・、まだ変われるか?」

 榊は黙って頷いた。


 -PM04:19 東京 工場地帯-

かりん「あぁ~もう!」

 エインシードの残骸が散らばる中、アーフクラルングにタウゼンファビュラーが噛み付いた。
助太刀にスティルネスが入る。腕のビームブレードでスティングバイトを切り落とした。
そしてタウゼンファビュラーは再びスティングバイトが回復するまで地面に潜った。

暁「くそっ、これじゃ持久戦じゃないか。」

 突然内部通信が開いた。

静流「鳳覇、桜、今から作戦を実行する。
   アーフクラルングをスティルネスで持ち上げて空中戦を仕掛ける。
   アルファードはそのまま地上で応戦、奴が喰らい着いたらノヴァを放て。」
暁「でもそしたら工場以外の場所まで被害が出る!」
かりん「じゃあ、アンタは何か策があるわけ?
    アタシは乗ったけどね。」

 確かに神崎の考えた作戦がベストであることは分かっている。でも工場地帯を少し行けば住宅街が広がっている。

静流「住民の避難は完了している。
   打った所で被害はない。」
暁「でも、皆の家が消滅したら・・・!」

 突然アルファードをスティルネスが殴った。

暁「ぐっ!」
静流「甘えを捨てろ、過保護すぎる良心は偽善だ!
   いずれ全てを失う!」

 いつもとは違う神崎の姿がそこにあった。自分がそうであった故に何かを失ったようなその姿が。
それを繰り返さぬように、強い眼差しが俺を見つめていた。

静流「桜、行くぞ。」
かりん「りょ~かい。」

 スティルネスはアルファードから離れ、アーフクラルングを抱きかかえた。

暁「くそっ・・・!!」

 仕方なく俺もその作戦に乗った。

ディック「ほぉ~、空中戦と地上戦。
     なるほど、ノヴァを使うか。それなら、もっと楽しくしてやるぜ!!」

 大百足が市街地の方へと進みだした。

暁「行かせるかぁっ!!」

 進む前方に太刀を投げつけて進行を防いだ。上空からもアーフクラルングがスナイパーで狙撃した。

ディック「さてと、それじゃあコッチも本気でいってやるぜぇっ!!」

 地面から出てくる大百足、その頭部だけが射出された。頭部は変形し、人型タイプへとなる。
人型となったタウゼンファビュラーがアルファードに掴みかかった。背中に回ったスティングバイトが脇の下から現れ、アルファードの胸部装甲を抉った。

暁「ぐあぁっ!!」

 このパターン、きっと向こうもノヴァを放てないように肩と膝を中心に狙ってくる。それだけは避けないといけない。
タウゼンファビュラーの頭部に拳を叩き込んで怯んだ隙に後に下がった。同時に鞘から残りの太刀を右手に装備する。

ディック「おっと、それは俺の距離じゃないんでね。」

 タウゼンファビュラーが飛び上がり、また百足の頭へと変形する。地中から長い胴体パーツが現れドッキングした。
再び大百足となったタウゼンファビュラーは地中に潜った。

静流「鳳覇、躊躇している暇は無い!
   次でノヴァを放て!」
暁「やるしかないのか・・・!!」

 その時、地面が揺れた。一瞬にして視界が暗くなる。

暁「!?」

 何が起こったのか、すぐに状況を判断する。どうやら地中に掘られた穴が落とし穴を形成していたらしい。
その穴にまんまと落ちたのだ。

ディック「アリ地獄へようこそ、って感じだなぁっ!サンクチュアリ!!」

 タウゼンファビュラーのスティングバイトがアルファードの胴体を噛んだ。そのまま地表へと持ち上げられる。

暁「離しやがれぇっ!」

 もがいても、スティングバイトは完全に腹部に食い込んでいた。引き離そうにも右手だけでは難しい。
とにかく抵抗すべく、太刀を百足の頭に突き刺した。パキっという音と共に太刀が簡単に折れた。

暁「何!?」
ディック「このタウゼンファビュラーは地中モードでは鉄壁の防御力を持つんだぜぇ?
     お前の太刀なんて、棒切れ同然だぜ!ひゃーっはっは!!」

 このままでは、残された方法はノヴァの使用しかない。

静流「鳳覇!!」
暁「悪い・・・皆・・・。
  サンクチュアリ・・・。」

 覚悟を決めた瞬間、赤黒いビームの攻撃がタウゼンファビュラーに直撃した。貫通はしなかったが、反動で百足が倒れこんだ。
その隙にスティングバイトからアルファードを脱出させることができた。

ディック「誰だ!?」

 一斉にビームが来た方向を見た。そこにある悪魔の様な漆黒の機神。両刃大剣が砲撃モードで構えられていた。

かりん「あれって・・・。」
静流「ディスペリオンか。」
暁「まさか、レドナ!!」

 ディスペリオンがアルファードの横で止まった。

暁「レドナ!」
レドナ「待たせたな、暁。」

 レドナがここにいる、つまりはあの絵を受け取って自分を見つけることができたのだろう。

レドナ「なぁ、暁。俺は・・・今からでも変われるか?」

 何に、というのはあえて聞かなかった。何となく俺も感じでそれを理解していたからだ。

暁「あぁ、当たり前だろ!」

 それを聞くと、レドナはディスペリオンを駆り、タウゼンファビュラーに大剣を構えて向っていった。

ディック「裏切り者のクソ野朗が!!」
レドナ「何であろうが構わない。
    だが、俺はお前を許さない!!」

 スティングバイトを大剣で受け止めた。

レドナ「暁、サンクチュアリ・ノヴァを放て!」

 ディスペリオンならノヴァをコントロールできる。つまり被害を出さずにタウゼンファビュラーを倒すことが出来る。
その状況なら、ノヴァを放てる。俺はレドナに答えた。

暁「おう、行くぜ!」

 アルファードの装甲が開く、美しい光が周囲を包む。

暁「サンクチュアリ・ノヴァッ!!」
レドナ「ノヴァ・コンバーター!!」

 ノヴァの光がディスペリオンが放つ青い粒子と一体化していく。聖なる領域は限定され、まるでビームの様に姿を整えていった。
そして光の収束体はディスペリオンの前方に居るタウゼンファビュラーを貫いた。向こうは長い胴体を身代わりに本体を守った。

ディック「んなろぉぉっ!!」

 頭部が射出され、本体だけが地中に潜っていった。残された百足の胴体部分が大きな爆発音を立てて倒れた。

レドナ「逃すかっ!」

 ディスペリオンが地面に大剣を突き刺した。ちょうどその真下にタウゼンファビュラーの本体があった。

ディック「なっ!?」
レドナ「俺が望む世界に、お前は邪魔だ・・・。」

 タウゼンファビュラーの腹部を貫いていた大剣を地面から引き抜く。そのまま剣先を展開し、ビームを叩き込んだ。
地面が振動し、赤黒いビームにタウゼンファビュラーは爆発した。地面が抉れ、砂煙が高く舞い上がった。

暁「やったな、レドナ!」

 アルファードをディスペリオンの隣に駆け寄らせた。

レドナ「あぁ!」

 ディスペリオンとレドナは空を見上げた。何か呟いたようだったが、俺には聞こえなかった。さっきまで悪魔のようだった機神は、形だけとなった。


 -PM04:40 ARS本部 司令室-

 戦闘が終り、ディスペリオンをARSのハンガーへと収容した。ARSへ着くと同時に通信で吉良と名乗る男から司令室に来いと連絡が来た。
初めて入るARS本部に俺はどう行っていいのか分からなかった。暁に道案内してもらおうと思ったが、どうやら赤いサンクチュアリの後遺症とやらを受けているらしい。
代わりに黒い制服を着た大人びた女がハンガーで待っていた。よく見ると、以前榊を届けた時に通信で見たオペレーターだった。

雪乃「夜城君!」

 ディスペリオンから降りると、その女が俺に手を振った。俺は小走りで向った。

レドナ「あなたは、通信の時の・・・。」
雪乃「初めましてっていうと、ちょっとおかしいわね。
   私はここの副司令、有坂 雪乃よ。よろしくね。」

 有坂に連れられて、俺は司令室まで向った。向う途中のだだっ広い廊下や、部屋に驚きの連続だった。
司令室に入ると、見覚えのある部屋だった。そういえばディスペリオンで榊をさらった時もこの部屋だった。

剛士郎「やぁ、夜城君。私はARS本部の総司令を務める"吉良 剛士郎"だ。」

 入るなり、奥の机に座っていた男が笑顔で言った。

剛士郎「まずは君に我々を助けてくれたことを感謝したい。」
レドナ「俺は皆に迷惑をかけてきた、助けたぐらいで・・・。」
剛士郎「助けた"ぐらい"と言うのは少々おかしいな。
    何かを守るという事は、誰にでも出来ることじゃない。」

 吉良は窓の外を見た。

レドナ「俺は、レイナの願いを叶えるために戦った。」
剛士郎「ほら、君もお姉さんの願いを"守っている"じゃないか。」

 そう言われて、俺は気付いた。結局この事は同転がっても何かを守ったことに直結する。

剛士郎「私も君に頼みがある。
    夜城君、我々ARSに協力してくれないか。」
レドナ「レイナを手術しているその代価か?」

 吉良は首を横に振った。

剛士郎「もう戦いたくないとするのであれば、それでいい。お姉さんを手術しているのも、人命救助としてだ。
    君がどういう返事をしても、我々は最善を尽くす。」
レドナ「・・・・・。」

 レイナが望んでいる世界へと変えるためには、ARSにいることは好都合だろう。
だが、今までに俺はARSに多大な被害をもたらして来た。それをころっと変えて入ることは許されるのだろうか。

レドナ「皆は、俺の事を恨んでいるんじゃないのか・・・。
    リネクサスだったという俺の過去はどういう形であれ残り続ける。」
剛士郎「確かに、心の傷というのは中々癒えぬものだ。
    だが、その傷は自分自身でどうにでもなるということだ。
    自分がどうであったか、そんなことは気にしなくていい。」

 剛士郎は振り返り、俺のところへと近づいてきた。目の前で立ち止まると、手を差し出した。

剛士郎「変えればいいさ、今から。」


 -12/29 AM07:17 福岡県 夜城家-

 俺は朝食を取り終え、食器を洗っていた。いつもよりも時間が半分で済んだ。少し変な感じがしたが、今から慣れないといけない。
最後の皿を洗い終え、俺はARSの制服へと着替えた。黒い制服でARSのマークが輝いている。鏡の前に立って、おかしくないか確認した。
冷静に見てみると、なかなかかっこいい制服だった。
 着替え終えると、俺はベランダに出た。外は雲ひとつ無い青空が広がっている。12月も終りなのに、寒さを感じさせないようだった。
今まで見てきた中で、一番いい天気かもしれない。こんな天気をベランダで済ませるのは何か物足りない。
俺は家を出て、屋上へと向った。遮るものが無い屋上からみるこの空は、絶景だった。
 屋上の真ん中で、俺は立ち止まって真上を見上げた。

レドナ(レイナ、この空のどこかでちゃんと俺のこと見てくれてるよな?)

 俺は右手を大空に掲げて、手を開いた。すぐそこにあるようで、ずっと遠くにある空へと。

レドナ(ずっと見守っててくれよ、平和な世界を作るから。)

 帰らぬ人にそう告げ、帰らぬ人の望んだ世界のために、俺は屋上を後にした。
 人は、誰だって変われる。だから俺も変わるんだ。変わる通過点で、困難に立ち向かわなければならない時があるかもしれない。
でも俺は変わることをやめない。もう俺は1人じゃないから。

 レイナがずっと俺を見守ってくれているから。


-EP14 END-


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